九日附のマダム・カセの日記に、彼の地の新聞に載つた、次のやうな話が紹介されてゐる。 題して 「トルコ版・矢切の渡し」。
十六歳の少女アイシェと十九歳の青年メフメットは相思相愛の仲だつたが、少女の父親はそれを許さず、娘アイシェと別な男との縁組を決めた。 少女は戀人メフメットに泣いて縋る。 父親には背けない。 しかし他の人と結婚するのは、どうしてもいや。 連れて逃げてよ……。
そこで青年は悲しい決斷を下す。 少女の父親の猟銃を持ち出して、先づは少女を撃ち、その亡骸を抱きしめながら、自分も喉元に銃口を當て、足で引金を引いて仕舞つたのだ。
兩家は話し合つて、二つの墓を竝べて据ゑ、二人はヤンヤナで(隣り合つて)葬られることになつたとか。
遲いんだよ!
最後の突つ込みは無論、カセさんによるものだが、次いでカセさんは、かう云ふ 「舊態依然とした家族の掟」 が今に到るも生きてゐるなんて、「現代の日本の常識では計り知れない」 事だと嘆じてをられる。
全くその通りであつて、「家族の掟」 なんぞ雲散霧消して久しく、老も若きも放縱な迄の自由を滿喫してゐる 「現代日本」 では、上のやうな悲劇は先づ起らない。 その代り、いつの時代、何處の國の 「常識」 を以てしても 「計り知れない」 やうな、おぞましくも悲慘な事件が起り續けてゐる。
それは詰り、「舊態」 にも 「近代化」 にも共に 「代價」 が伴ふと云ふ事だが、その 「代價」 として、上のやうな 「若き戀人達の悲劇」 と、例へば 「母親に毒を盛る悲慘」 と、どちらを選ぶかと問はれゝば、はて、何と答へたものか。
「悲劇」 には熱い同情の涙を注げるが、「悲慘」 からはたゞ目を逸らせるしかない……と云ふ邊りが、ヒントと云へばヒントなのだが。
AD: ノートPCが抱えているシステム管理の問題に、新しい答えを。
「管理」、「セキュリティー」、「パフォーマンス」における革新的な機能を企業用ノートブックPCにおいても実現!
intel.co.jp_jp_gopro
Ads by Pheedo